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・・・ちょっと寄り道・・・
< 旧上伊那図書館 >
昭和5年に建てられた旧上伊那図書館の耐震補強と大規模改修が完了し、さらに設計者は黒田好造とされていた建物に、森山松之助が基本設計をしていた事実が判明したとのことで、平成23年5月28日に記念のフォーラムが開かれた。(右の信濃毎日新聞5月28日付記事参照)
建物は現在は伊那市創造館として利用されている。
上伊那図書館は、基本設計・森山松之助、実施設計・黒田好造、施工・岡谷組 野口誧一、辰野の製糸家武井覚太郎の寄付ということになるが、野口誧一記念誌(「夢を馳せて─努力ひとすじの野口誧一翁─」(野口誧一記念誌刊行会
1990年発行)によると、発注者は片倉製糸紡績株式会社、請負額は8万円、工期は昭和4年10月から昭和5年8月となっている。
武井覚太郎も、片倉製糸紡績株式会社に吸収合併されたと記憶しているが、どのような経緯から発注者が違っているのか、深い意味があるのか、興味がわくところです。今後の研究がまたれます。
・・・そして本題・・・
〔設計者〕
2006年10月、しなのき書房から「信州の近代遺産」が発行された。
さっそく買ってきて読んでいると・・・
松本深志高校本館・講堂の紹介の部分に
「設計は、県の営繕技手三苫繁実ほかで・・・」とあるではないですか。
長野県営繕技手。
この珍しい姓をもつ設計者は他にはいない。
この人だと一瞬で確信した。
上・左の資料とも
しなのき書房発行書籍『信州の近代遺産』より「松本深志高校本館・講堂」
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この小松芳郎先生の解説は素晴らしい。「建築主」「設計者」「施工者」「工事金額」「工期」「建物規模・構造・階数・面積」「仕上の概要」、短い文章の中に情報が全て網羅されている。
さらにこの「三苫繁実」を調べてみると、長野高校の金鵄会館も設計している。
しなのき書房発行書籍 『信州の近代遺産』より
「長野高等学校旧南校舎」 |
岡谷市から長野県立歴史館へ「三苫繁実」を照会してもらうと、
博物館の福島正樹さんから、下記の内容の文書が返信されてきた。
1、大正13年度の「長野県職員録」に土木課の「県吏員」として「月五〇 三苫繁實」と見えるのが初見。
2、昭和2年の「長野県職員録」では、営繕課の「建築技手」として「月五〇(技手月─警察技手月一〇) 三苫繁實」とみえる。
3、昭和4年の「長野県職員録」では、営繕課の「技手」として「月─ 営繕技手(月五三) 警察技手(月一ニ) 三苫繁實」とみえる。
4、理由は不明だが、昭和6年の「長野県職員録」の営繕課には三苫の名前がない。
5、昭和7年の長野県職員録は歴史館では所蔵していない。
6、昭和8年の「長野県職員録」の営繕課の技手として、「月─ 営繕技手(月七ニ)工兵少尉 正八 三苫繁實」とみえる。
7、昭和9年の8年に同様。
8、昭和10年の「長野県職員録」の営繕課の技手として「月─ 営繕技手(月七六)工兵少尉 正八 三苫繁實」とみえる。
なお、昭和11年から昭和20年の職員録は歴史館に所蔵していません。
また、昭和21年の職員には三苫の名前はありません。
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さて、一体この工兵少尉なるものと、営繕課の技手なるものとは・・・。
LEVEL5へ続く─。
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