旦過の湯は高温の源泉かけ流し温泉としてよく知られており、鎌倉時代にすでに寺湯として使われ、古い歴史を誇る温泉施設。 吉川英治の小説「宮本武蔵」中には武蔵が入浴し、 最近では浅田次郎「一路」の中にも、参勤交代の一行が旦過の湯に入浴する一文が出てくる。 旧施設の老化に伴い、建て替えとなった本計画では、 傾斜のある変形敷地の中に既存の源湯舎を残しながら効率の良い敷地利用と工事計画が求められた。 男女2つの浴室をRC造とし2棟に分散配置、それをつなぐ形で玄関ホール、脱衣室などの各室を納める部分を木造とし、 浴室としての耐久性を確保しながらも、街並みに合わせたやわらかな木造を基本とした形態とした。 浴室RC造部分には水密性の高い防水コンクリートを使用、外壁面には外断熱を施し内部結露を少なくし、内部仕上の改修も容易にした。 敷地の高低差を利用してふところの大きい床下ピットを設け、激しい利用に耐えるメンテナンス空間を確保した。 ロビー部分は豊富な源泉を利用した床暖房で2層分の吹き抜け空間を無理なく温めている。 建物の意匠は歴史的な下諏訪宿の雰囲気をいかに踏襲するかに注力した。 街道に面する部分は2階建てのボリュームに出し梁造りとし、全体に竪繁格子を設けた。 軒先には堰板(せきいた)、棟部分にはシンプルな雀踊りを配した。 浴室部分は土蔵風の造りとし、街道に面しては施設のシンボルとして「鏝絵」を入れた。 オープンからの利用状況は好調である。特に地元以外の利用者が多くなっていることはうれしいことである。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||