下諏訪財産区 旦過の湯(2012)諏訪郡下諏訪町

設計余談

  ピクセルモンタージュ



浴室の壁面に入れられた絵タイルの作成技法で下諏訪町出身の市川健治さんによる作品です。
上の写真は女湯の壁面にあるものです。
葛飾北斎の「富嶽三十六景」中の「凱風快晴(赤富士)」を模したものです。

 (タイル絵の一部を拡大したもの)

絵を構成しているのは細かい写真で
近づいてみると、下諏訪町の風景だったり、建設に携わった人だったりします。
旦過の湯に行ったら近づいて見てみてください。
当社の社員の集合写真も組み込んでいただきました。素晴らしい記念になりました。
一生残ってしまいます。



男湯の方は「神奈川沖浪裏」を模したもので、とてもよくできています。
竣工の記念に作った入浴券にも、印刷されています。

出来てしまうと、すんなり納まった感じのするタイル絵も、
採用を決める際には伝統ある旦過の湯に馴染むのだろうかとの議論はありました。
財産区の方の選択は間違いなかったと思います。

タイル絵をデザインした市川さんにとっても、
公共の建築物の一部として採用されたことは珍しいとのこと。
お会いした時もとても喜んでくれていました。
地元出身の方ということでも、これからますます活躍していただけたらと思います。




鏝絵

  

当初、伝統的な大黒様などの絵柄をもとにしたものをと考えていたのですが、
打ち合わせていく中で、旦過に由来のあるオリジナルな絵柄がよいとのことになりました。
左官職人が描く図柄は概ね決まったものであり、
オリジナルのものはこちらから図案を提示することになりました。

  
(当社のスタッフが修行僧をイメージして作成した図案)


ところが、こちらから提案した色合いは、非常に微妙な色合いで、
原色をベースに着彩する左官職人には難しい表現とのこと。
難しいからといって、原色ベースでは修行僧の雰囲気が表現できず、
どうしたものかと悩んだ挙句、着色してくれることになったのは、
立体看板に着色することができる、看板職人の方でした。


出来上がった鏝絵を見て、左官職人の方も感心しきりでした。
本来の鏝絵とはちょっと違うかもしれませんが、面白いものになりました。


下諏訪町に鏝絵がふさわしいのか、という議論も当初からあります。
貴重な左官職人の技を少しでも残していきたいという思い、
単純に面白いからやってみようという思い、
様々な思いが少しエリアを超えて表出する、そんなことから広がる文化もあるのではないか、
そんな風に思います。
ちょっと風変わりですが、私個人としては面白いのではないかと思います。

その場所にふさわしい建物とは何か、
地元の文化を残していく継承していくとはどういうことなのか、
そんなことを考えながら様々な方と議論できたこと自体、非常に貴重な経験となりました。