所長コラム  正博の彫り出しもの(木彫)アラカルト     
其の十・恵比寿と大黒 ② (出雲大社)
   
6年ほど前に山陰を旅行した。
足立美術館、三徳山三佛寺投入堂、出雲大社、島根県立博物館・・・・。
しっとりと落ち着いた山陰の風情、建築や絵画、出土品に感銘した。

            写真1・三徳山三佛寺投入堂
                     (池本喜巳写真集より引用)


年末のNHK ゆく年くる年によく出てくる。途中の縣造りの建物もとてもいい。
大枚17000円を出して写真集を買ってきたが(写真2)、しばらくして本棚を見たら先代荘一の蔵書に「三徳山三佛寺 高木啓太郎写真集」(研光社、写真3)があって驚いた。
昭和45年発刊とのことで、先代もちゃんと歩いて同じ山道を登ったのかしらと思いがめぐる。

           
 
写真2・「三徳山三佛寺 池本喜巳写真集」   写真3・「三徳山三佛寺 高木啓太郎写真集」
   (㈱新日本海新聞社発行)                    (研光社発行)


出雲大社は高さ12丈(約36m)、土中より出現した宇豆柱を見れば史実にも明らかで、
想像できるのがすごいと思う。

 
                   島根県立博物館で購入の絵葉書
     左は中世出雲大社模型(鎌倉時代)、右は古代出雲大社本殿模型(平安時代)




出雲大社では、大国主の命をおまつりしているが、
大国主の命は大黒様とのことで、大社の左側の道奥のつきあたりに大黒様だけをまつった大黒殿がある。
小さなお堂に奉納された大黒様が、それこそ所狭しと陳列されていてびっくりした。中には左甚五郎作というのもあった。
よく探せば立川のものもあるかもしれない。
これから行く方は覚えていて、ぜひ見てほしい。ただし、じっくり見るには時間がかかる。計画的に2時間くらいは見ていたい。


                 
                 繁昌だいこく (枡H・Wとも105mm L65mm)
            
二合枡と三合枡の中に入っており、「ますます五合(はんじょう)」


 
恵比寿大黒の厨子入 扉を開けたのが右写真(2枚とも左が古いもの、右が6年前のおみやげ品)
         古い厨子はH100mm W118mm L66mm  新しい厨子はH80mm W91mm L55mm)


おみやげに「恵比寿大黒の小厨子入」と「繁昌だいこく」をいただいてきた。
厨子入は扉に丸窓があいていて、恵比寿大黒様がのぞいている様になっている。
扉は上へあげると外れるが、普段は開けたままでいいのか、閉めた方がいいのかわからず、とりあえず閉めたまま置いてある。


1年くらいしてから、下諏訪で古い出雲大社の恵比寿大黒を見つけて(厨子入写真の左)、いただいてきたが、二回りほど大きい上に、全体のつくりが格段にいい。

いつから変わったかわからないが、並べておいてある。
新しいものは台座にくっついているが、古いものは外へ出せるので、出して写真を撮った。
表情に特徴がある。

                   
                     恵比寿大黒ともにH80mm W50mm L45mm


中から外を見ている大黒様の気持ちになったら、ふと昭和44年の春3月、学生時代にニッセイ電機の花巻工場の工事現場にいた時のことを思い出した。

花巻温泉へ行く途中の左手にあったと思うが、高村光太郎の住んでいた農家があった。
その庭には厠があって、その古ぼけた木の片開き戸には「光」という文字が彫り抜いてあったのです。
中でしゃがむと「光」の文字から、それこそ光の光が差し込んできて、
闇の中に「光」の明るさが心から感じられるものでした。
この厠の開き戸は、今あれば、光太郎の作品として大変価値のあるものと考えられます。

あの厠と光の開き戸「光」は今もあるのでしょうか。
もう40年も前の思い出です。


 
                                      (2011年4月26日)