所長コラム  正博のアレレ!コレレ!のコレレクション     
其の七・お酒のおちょこ
   


   

製糸業には、生糸のセリシンという物質を取り除く精練という技術がある。
かつて製糸業で栄えた岡谷市で、この仕事をしていた川岸精錬の
矢島進社長からいただいたおちょこである。

この川岸精錬に関係する社屋建て替えの際に、矢島社長から、
旧社屋の中にある膨大な残存物の始末に困っているため自由に持っていって構わないと言われ、
選んで、もらってきた品である。

かつて製糸業に携わった職人さんたちが、当時貴重だったお酒をこのおちょこで
ちびりちびりと飲み交わしたのだろう。
ほろ酔い加減でしみじみと語り合ったかもしれない。

13個そろっているが、
一つあたりは重さ24gと軽く、直径51mm高さ30mm、入るのは24ccと小さな杯。
なんとも控えめな大きさで、品が良いではありませんか。

毎日精一杯生きていると、夕飯時には飲まずにいられない私でありますが、
以前、若かりし頃、お酒の席で調子に乗って大きい杯でのんでいた時に、
小沢建設の故小沢義春氏から「なんじ大杯でするなかれ」との言葉をいただいたことがあり
このおちょこを見ると、この言葉を思い出して涙が出てくるのです。
小さいこの杯で、手酌で勝手気ままに飲むことがよい──と、しみじみと思うのです。

 
                                  (2013年8月7日)