所長コラム  正博のアレレ!コレレ!のコレレクション     
其の拾壱・吉田館の招き猫
   
我社が㈱乃村工藝社の協力会社としてプロポーザルから設計監理までお手伝いを
させていただいた岡谷蚕糸博物館が8月1日に、新たにオープンしましたが、
皆さんは行ったでしょうか。
実は、博物館のタイムトンネルの中程に飾られている招き猫の兄弟が我社の2階にいます。

このHPでもあちこちに登場しているのですが、現物の高さは1メートルほどもあります。
右手を上げ、胸には「吉田館」の文字、お腹の部分には鯛を手にした恵比寿様の絵柄。
明治6年の創業で平成3年5月まで、岡谷市で製糸業を営んだ「吉田館」の繭倉に置かれていたものです。
市の近代遺産総合調査の一環で、平成5年に我社が吉田館の繭倉調査に参加した際、
吉田貢社長から1体を譲っていただきました。

    
                                            (↑ 実は釣竿がありません)

かつてたくさんの繭が保管された倉庫で、招き猫は天井の梁の上に置かれていました。
商売繁盛を願うとともに、繭を狙って侵入してくるネズミを追い払うという縁起物で、多い時には20体はあったとか。
私が調査した時には、6体ほど残っていたと記憶しています。

 
(上の写真は左右ともに「近代建築再見」(建築知識発行)より引用、宮本和義撮影


かつて諏訪地方には、白壁の繭倉が幾棟もありましたが、製糸業の衰退とともに消え、
岡谷市銀座(現在の生鮮市場の場所)に市内で唯一残されていた吉田館の3棟も
平成5年の調査後に解体されました。

ただ、歴史的遺構が姿を消していっても、製糸業の歴史を後世へ伝えようとする動きは広がっています。

蚕糸博物館に飾られている招き猫は、我社の招き猫より色鮮やかなので、
作られた年代が新しい、弟の猫なのではないかと思われます。


 
                                   (2014年8月29日)